特集 第26回:卒業論文 ふるさと銀河線とローカル線の果たす役割X
2006年4月16日掲載
第3章 第三セクターと民間
第1節 第三セクターとは
ふるさと銀河線を運営する形式の第三セクターとは、何度も述べているように、企業と地方自治体が出資して設立する企業である。
鉄道の他食品加工から博物館などまで様々なジャンルがあるが、目的としては地域振興を目的とするものである。つまり、地域づくりやまちづくりのきっかけ、材料を目的とするものである。
第三セクターは道内はもとより全国に多数あるがその意味としては営利目的ではなく、地域のため、まちのため、住民のためなどを目的としている。そのため行政が出資し公共性と企業たるものやっていくのは資金が必要であるが非営利目的であるため収入を考えない。そのため、一定の収入を地方公共団体が与えているのである。
第2節 第三セクターができて一般企業ができないこと
第三セクターが日営利目的で設立される企業であるということは説明した。では一般の企業はどうであるかというと逆で営利目的の経営をする。利益を追い求めるのが企業である。利益がないと会社を養っていけないのである。そのため血眼になって稼ぎを出す。
それに対し第三セクターは、地方公共団体から出資金が入る代わりに利益第一ではなく地域、住民第一だということである。ここが大きな違いとなってくるのである。
では、銀河線はどうか?と言えば先に述べているように、銀河線ではコスト削減を行なっている。非営利団体であるはずがおかしいではないか?ということになろうが、銀河線の場合は出資金以上に赤字が出るためである。道からの出資金だけを見ても収入は年間2億円である。それに対し赤字が年間4億である。つまり出資金をはるかにオーバーするため、経営努力をしなくてはならないということになっている。なので本来とはちょっと違ったものにはなっているのだが、地域振興、活性化を目的に作られた、設立されたということは他の第三セクターと変わらないし一般企業との理念も違うのである。
第三セクターにできること、それは利益を考えず住民、地域のためであれば利益以下のことでもするということ、つまり、銀河線でいうと赤字を年間4〜5億も出すような鉄道は一般ならすぐに廃止であった鉄路であるはずが、第三セクターだからこそ今まで赤字であるのにもかかわらず地域住民の足、地域の要として残ってきたのである。こうした行政の公共性と民間の経営が合わさったものそれが第三セクターであるといえる。
一般企業であればこうした地域住民の足や地域のことなどは配慮せず利益のための運営になってしまうため、だめなものはだめだと切り捨てられてしまうのである。
例として幌内線の廃止後の代替バスとして民間が運行して来た2系統あるバスのうち乗客がいないという理由で2005年に廃止されてしまった。このように同じ交通機関でもバスと鉄道、地域の違いなどがあれ、民間だと廃止が簡単に出てきてしまうのである。
つまり銀河線は私鉄ではなく第三セクターの道を選んだのは地域のため、地域の足のためを考えると正解だったのである。
第3節 利益主義の結果
利益主義の私鉄一般企業が利益ばかり意識しすぎそれが故の結果が最近よく起こっている。それを追って論じるとする。
雪印乳業事件
2000年6月27日大阪市で食中毒の最初の届出があった。原因を調査した結果、雪印乳業大阪工場の製造した乳製品であることが判明した。しかしさらに調査した結果、これら乳製品に使われていたのは全て脱脂粉乳でありこの脱脂粉乳が黄色ブドウ球菌に汚染されていたことが判明した。患者の数は最終的には14780名に上り前代未聞の事件となった。1
その事件をさかのぼって行くと脱脂粉乳の製造過程に行きついた。脱脂粉乳は、北海道大樹町の「雪印乳業大樹工場」で製造されたことが判明した。では大樹工場で何が起こったのだろうか。
それは脱脂粉乳が製造された4月にさかのぼる。当時脱脂粉乳を製造中停電が発生し、製造ラインが9時間に渡って停止した。しかしこのとき本来低温に保っていなければならないはずの工程で脱脂粉乳の材料の牛乳が4時間に渡って20〜30度にさらされ2、結果雑菌が発生したのである。
本来こうしたものは廃棄処分しなくてはならないのである。しかしこのとき大樹工場長が下した判断は「出荷」であった。その理由としては、「このまま捨ててしまうのはもったいない」「利益をあげないと出世できない」などの理由であり、最終の熱処理もしないまま脱脂粉乳に加工、そして大阪工場に送ってしまったのである。
さらに大阪工場でも十分な検査がなされぬまま脱脂粉乳は様々な乳製品に加工され食卓へ上ることになったのである。
その後汚染された牛乳を捨てるよりもリスクが伴い1000人のリストラと雪印は乳製品部門から撤退するまでに至ってしまった。結局はきちんとやるべきことをやっていればリスクが小さかったといえるのである。
尼崎脱線事故
2005年4月25日JR福知山線3でJR史上最悪の大事故が発生した。「7両編成の宝塚発同志社前行きの快速列車が塚口―尼崎間にある70Km/h制限の急カーブをはるかに上回る100Km/h以上で進入し遠心力で脱線、転覆しカーブの先にあったマンションに先頭車が突っ込み2両目は側面からマンションに激突大破し死者107人、重軽傷者540人に上る戦後4番目、JR史上最大の大惨事となってしまった」4。
当時置き石、運転手の体調不良など様々な原因があげられ救助が続けられる一方で原因究明がなされた。
その結果運転手の速度オーバーにより列車がカーブを曲がりきれず車輪が乗りあがり脱線(せり上がり脱線)を起こし線路から外れたのである。
以上が原因であるがその裏には様々な要因が絡んでおりあきれたJR西日本の体質というものも明らかになったのである。
まずなぜ速度オーバーをしたのかであるが、福知山線は私鉄との競合区間でもあり少しでも乗客を確保しようというJRの思いからこの区間の売りを速達ということにした。そのため事故が起こった急カーブは元々単線区間だったがより早く乗換駅である尼崎駅に到達できるように無理に改良された区間であった。そのため現場となった急カーブが存在するのである。
さらに運転手を取り巻く環境もあった。ダイヤがギリギリの設定であったため乗り換え列車に接続できない、遅れは私鉄との競合に負けてしまうなどということで秒単位での運転を余儀なくされ、もし遅れれば秒単位で会社に報告、場合によっては「日勤教育」というペナルティが与えられていた。
本来日勤教育は再教育などを目的としたものであるが、JR西日本では拷問やいじめといったものであった。運転の規則を全部上司に囲まれて書き写す、運転業務の停止、ホームに立たされて到着する列車1本1本に自分の犯したミスを大声で言わされるや、草取り、トイレ掃除までに渡り、運転手は日勤教育=拷問や恐怖というものに感じていた。そのため多少の無理や違反を犯してしまうということである。
ではそうさせたのは何だったのだろうか?と言えば利益である。
JRはたばこ、国鉄、電話と国営事業の民営化の際に国鉄が民営化され登場したもので、全国で旅客会社6社とJR貨物の7社に別れた。
そのときから利益優先型の経営がはじまったのである。国鉄時代は国から運営費が出ていたため、どんなに赤字が見込まれる路線でも開発され職員数も多かった。しかし民営化されたことで私鉄や他の交通機関との競争が始まったわけである。今度は赤字をだせば、会社の存続に関ってくるのである。
そこで追いつけ、追い越せという競争型社会になってきたわけである。
少しでも乗客を確保したい、収入を多くしたいということになってきたため他の交通機関に勝つためサービスの充実、高速化、利便性の向上などが行われてきた。ここまでは政治家がよく郵政民営化の言い訳に出してくる話である。
しかし裏返せば、サービスはよくなったが無理、過剰な高速化、経営の効率化を図るため赤字路線をバサバサと切り捨て廃止にし本数も減らし、そして直接会社の利益にはつながらないと思われる安全衛生面やメンテナンス面がどんどんそぎ落とされ、また工場なども子会社や下請け会社の社員が入るようになり、上から下を見下ろすことができなくなったのである。つまり下請けが進むと一体下では何が起こっているのか、何か起こった際、何がどうなっているのかが全く上がつかめないのである。
また運転業務にもこうした利益を求める圧力がかかりわずかな遅れでも許されないという余裕の無い経営が行われるようになってきた。
なぜ大都市圏でなぜあれほどまでに列車の本数が多いのか、それは利用客が多いというのが1つの理由であるが、もう1つ少しでも多くの乗客を確保したいという各鉄道会社の熾烈な争いの結果待たずに乗れるといこと、駅に行ったらいつでも乗れるという利便性を求めた結果であると考える。
尼崎事故ではさらにJR西日本のあきれた対応も課題となった。
被害者、遺族に全く配慮しない対応、発言、行為が被害者、遺族の心を逆なでし一層因縁が深まりJR西日本の信頼性を益々失う結果になった。直接関係ないとは言え、同じ西日本の尼崎車掌区の職員が事故の日の事故後TVなどで報道している時間帯名のにもかかわらず、親睦会でボウリング大会へ行き、その後数人が飲食までしに行ったのである。
また事故列車にたまたま乗っていた2人の運転手が事故後、会社に電話をいれたところ、救助に当たれとの指示ではなく、現場を放棄して時間内に出勤せよと指示であった。またその運転手らもまず救助をせねばならぬ立場でありながら電話で会社に連絡を取り、さらに会社の指示だからといって現場を放棄し、出勤し何事もなかったかのように運転業務に着いているのである。またこの事故後もオーバーランなども相次ぎ、さらに札幌―大阪の寝台特急「トワイライトエクスプレス」の車内販売の職員が売上金を着服していたりと襟を正す姿勢が口先ばかりで行動が伴っていないのである。さらに問題となった日勤教育も内容こそは変わったが未だに存在するのである。
このことからJR西日本の腐った体質が細部まで行き渡っていることが照明されたのである。さらに未だに遺族や被害者との話し合いが進展しておらず補償問題なども未だ決まらずじまいなのである。
さらに2005年12月25日クリスマスの日、羽越本線で特急列車が脱線し転覆、5人が死亡する惨事が繰り返されてしまった。この事故は風が原因とされているが、JR北海道が1994年石勝線西新得信号所―広内信号所を走行中の特急列車が、狩勝おろし(風速33m以上の強風)にあおられ、先頭から3両が脱線転覆した。死者こそは出なかったが、車両3両が廃車になってしまった。その事故を受けJR北海道では、現在も石勝線で風対策の柵を設けたり、独自の風規制を設け再発防止に努めている。
しかし羽越線での事故は石勝線での事故を受けて注意すべき風が渦巻く場所でありながら、独自の風規制もなく安全対策もとられていなかった結果尊い命が失われる結果となってしまったのである。
JR北海道では
一番身近なJR北海道ではどうなのであろうか。それは決して明るいものではない。
2005年だけでも年が明けてからすぐに昨年から続いていた重大ミスが続き、列車が運転所で脱線したり、職員が運転所に入ってきた列車に接触したり、貨物列車が入れ替え中に車止めを突破し、脱線したり、線路の保線ミスで通過車両が破損したりと、ミスが相次ぎさらに、JR貨物北海道支社の運転手が覚醒剤を使用して運転し逮捕されるという驚くニュースも夏に判明し、道や国土交通省からも改善命令の通達があった。しかしそうした中でついに事故に発展し苗穂駅構内で作業中の作業員が列車に撥ねられ死亡する事故が起こってしまった。
その後も脱線や軽微なミス、車両不具合、函館本線上で作業中の重機と列車が衝突し作業員ガ死亡する等が相次ぎ、2006年に入ってからも苫小牧駅構内で回送列車に入線して来た普通列車が接触するという事故が起こっている。
また2006年3月のダイヤ改正では札幌圏、青函での輸送が強化される一方で地方の切り捨てが行なわれている。実際に札幌―稚内の夜行列車「利尻」と札幌―網走の夜行列車「オホーツク9、10号」が季節化され各方面の観光シーズンのみの運行となってしまうことが決定している。
実際これらの列車の乗車率は20%などと非常に悪いのも事実である。しかし乗る人がいない一方で地方に住んでいる人自体が少ないことを思えば、季節化は地方に切り捨てにつながることになろうし、季節化といってもほとんどの期間は走らないことを考えれば半ば廃止ととってもいいのである。
これも利益につながらない列車、地方の切捨てである。稚内市などではJRなどに陳情しているがその願いもかなわずという結果になってしまっている。
これらの地域は所要時間がかかるため、朝一番の特急列車に乗っても到着が昼過ぎになってしまう。そうなると特に地方へ向かう列車の場合行きづらい、不便だなどの理由から観光客など訪れる人の数も減り、また不便な地域からはなれる人もいるであろう。こうしてたかが列車の減便であるが、されど減便で地域の衰退につながる要因の1つとなるのである。
またJRも利益ありきの判断しか下さないという現実もたかがダイヤ改正からも見て取れるわけである。先に述べた駅の廃止という問題も周囲に人が全く住んでいない場所は別としてこうした駅の廃止は地域の顔が消えることとなり地方切捨てにつながるのである。
1 「雪印乳業食中毒事件原因究明調査結果(最終報告概要)」
http://www.mhlw.go.jp/topics/0012/tp1220-1.html を参考にした
2 「兜町事件簿(3巻) 雪印乳業の食中毒事件(前編)(後編)」
http://members.at.infoseek.co.jp/J_Coffee/kabutochou3.html#yukijirushiを参考にした
3 「はてなダイアリー」http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%A6%C0%FE%BB%F6%B8%CE を参考にした
4 『福知山線での脱線衝突事故にあたって』(筆者2005年5月作成)
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