特集 第27回:卒業論文 ふるさと銀河線とローカル線の果たす役割Y

2006年4月19日掲載

第4節 民営化の弊害

耐震偽装問題

2005年、東京でホテルやマンションの耐震偽装が明らかになった。本来無くてはならない耐震強度を大きく下回る数値であるのにも関わらず、マンションを販売していたというもので、世の中を大きく揺るがした。

この事件では姉歯元建築士が耐震強度の計算を改ざんし、実際必要な数値より少なく出していたのである。さらに必要な鉄筋の量を減らし経費を浮かせていたのである。

そして、その姉歯元建築士の裏には様々な会社が関わっており、分譲マンションの開発、販売を手がけている「ヒューザー」や、民間の指定確認検査機関「イーホームズ」など様々な企業、団体が芋づる式に関与が明らかになった5 6

形上では、姉歯元建築士が構造設計を偽装し悪者となっているのだが、ヒューザーなどがコスト削減のため、姉歯氏に圧力をかけ偽装や鉄筋の量を減らさせたというスジとなっている。

2005年に姉歯氏が2006年にはヒューザーの小島社長がそれぞれ国会での証人喚問にかけられ、2006年1月現在、真相は究明中であるが、一部国会議員が絡んでいたとの指摘すらある。

こうした偽装問題ではこうした企業などが悪者になっているが、片方ではこうした建築の際の検査など、本来国で行なうべきことを民間にまかせた結果であるともいえるのだ。つまり利益を優先するがためにメンテナンスなどを削るのと同じで、低コストで納めたいというのが企業である。ということは鉄筋を減らすことや、耐震強度の数値を偽るということをしてしまうのが民間である。それを未然に防ぐ、目を光らせるのが国であったり地方公共団体であったりするのであるが、小泉内閣の進める「民間でできることは民間で」の民営化の流れのため、お目付け役がいなくなってしまった。その結果であるともいえるのである。

そのためこうした信じられないような事がまかりとおる世の中になっているのが事実である。

 

郵政民営化

2005年一度衆議院でかろうじて通過し、参議院で審議の結果廃案になった「郵政民営化」の是非を問う選挙が9月11日に行なわれた。

これは小泉首相の進める郵政改革の1つで、郵便局を民営化するというものである。しかし地方に与える影響が大きいなどの理由から、自民党内からも反対派が続出し審議の結果衆議院では造反議員の票もあったが、ギリギリで衆議院を通過、参議院に送られたが参議院では否決され、廃案となった。

しかし小泉首相はあきらめず参議院で否決され廃案になった変わりに、衆議院を解散、造反議員を公認せず代わりの対立候補をあちこちから掘り出し、経てて反対派に衆議院選挙という形で郵政民営化の是非を国民に迫ったのである。

この結果自民党は歴史的勝利を納め事実上郵政民営化が容認された結果となり、郵政は民営化された。ただこの郵政民営化は特に地方に大きな影響をもたらせるとされている。つまりこれまで民間企業とは利益あっての企業と述べているように、郵便局もこれからは利益の時代、採算の合わない郵便局は統廃合されてしまうのである。

政府は「郵便局は減らない」と訴えているが、すでに北海道でもジワジワと民営化の流れが押し寄せている。

幌延町では幌延郵便局の移転新築に伴い、周辺五郵便局の外務事を幌延郵便局に統合しようというもう動きがあり、町民が立ち上がり小学生以上の町民84.2%にあたる3166人から署名を集め松川俊光郵政事業部長に手渡し、「天塩町の人口減と過疎化に拍車をかけることになり、絶対に許されない」と訴えた

このように地域から郵便局が消えて行くのは目に見えていたはず、ではなぜ郵政民営化を押す声が大きかったのだろうか。それは都市の一極集中型社会がもたらせた弊害である。

都会には多くの人が住んでいて、いろいろなものに恵まれ、地方の実情がなかなか見えづらく理解もされにくい。この郵政民営化だけとっても、都会には郵便局はたくさん存在する。そのため、「そんなにいらない」とか「少しぐらい減っても問題ない」というのが多数である。

しかしこの問題を地域に置き変えると話は全く別である。地方では郵便局は地区ごとなどに1軒あるかないかのレベルである。これが採算性で判断されるとすると地区に1つしかない郵便局で、地区の全員が使ったとしても到底都会のレベルとは異なり採算が合わない。そうなると統廃合の対象とされてしまうのである。

幌延の問題のようにもし、地区の郵便局がなくなると本局などと統合され、遠くの郵便局まで行かなくてはならず行くためには車を運転できればよいが、高齢化の進む地方では、運転が無理な住民も多い。さらに交通機関も使えるレベルにはないとなると、郵便局は一体何時、どうやって使えばいいのかということになる。

さらに地方の郵便局は都会の業務だけをこなす郵便局とは性質がことなり、その地区のことを知り尽くしている。そのため高齢者の家を郵便物の配達ついでに見回ったり、高齢者の相手になったりと、地域の郵便局、地域の拠点となっていることが多い。しかし簡単に統廃合され地域から郵便局が消えたらそうした地域を監視したりすることができなくなり、地域が乱れたり高齢者の孤独死ということも起こりえるといえる。

なので地域と都会との郵便局はそのものの性質が違うといえるのである。

しかし国民全体で見ると一極集中型社会であるため、断然都会の人口が多く都会の意見が力を握る。その結果地域の実情に合わないものだろうと、地域の現状を知らない都会の人間の意見だけで通ってしまうのである。

このことから一極集中型社会は、地域の声が都会に届きにくいことが同時に証明されよう。

国鉄は昼間から風呂に入っていたり、酒を飲んだりしていた・・・という話をよく耳にする。しかしこの話には続きがあり「だけど、ちゃんとした仕事はしていた」という。つまり民間の利益のための仕事ではなく、国の機関であるためお粗末な仕事ができない。さらに国の仕事を担っているという責任感が生まれる。また利益は追求しなくてもよいとなると利益のための仕事ではなく、仕事のための仕事を行なうようになる。つまりプロ意識を持って仕事に専念するということになる。

確かに国鉄はひどい態度だったと聞く。しかしやるべき事はプロ意識を持ってやっていたはずである。こうした仕事のための仕事、プロ意識、仕事は単なる利益のためのアイテムではないということが民営化によって失われて行くのである。

 

合併問題

自主的合併がうたわれている平成の大合併だが、実態は国が地方への交付税削減を目的としたものであり半ば強制合併の色合いを強めている。合併する自治体には合併特例債が認められ、合併しない自治体は交付税を大きく削られるのである。そのためいつしか地元の意思などは全く考慮されずに、財政ありきの問題にすりかわりより力の小さい自治体ほど、合併せざるを得ない状況になっている。

そうした中で、北海道はあまり合併が進んでいない。それは北海道特有の条件があるためである。北海道はいうまでもなく、都道府県単位で言うと一番大きな塊である。そこがネックとなっている。

合併することによって広大な面積になってしまうことを懸念しているのである。またそれによっておこる中央集中型の地域形成も問題だとされている。

例えば、大きな北見市は周辺の自治体と2006年合併し大きくなる。そうなると合併相手の自治体の力関係が銀河線問題のように力を振るうようになり、政治も、経済も、人も、力のある地域へ集中してしまい周辺は「空っぽ」という状況に陥ってしまう。これはいわば小さい自治体が廃止になることを意味するのである。さらに広大すぎて行政が管理しきれないという面もある。もし何か災害などが起こった場合、迅速に対応されなかったり、より人の多い中心部だけ重要視され、平等に行なわれなければならない救援活動なども行き渡らなくなってしまう。

そこで自治体は合併する事で公共事業に使うことが出来る「合併特例債」に飛び着くか、それとも地域の事を考えるかというところではかりにかけると合併しない方がよいという判断も有力になってくる。いくら特例債が認められても面積が広がるだけに、結局は末端部分まで均一の行政サービスを行なおうとすればそれは濃厚ではなく、薄っぺらいものになってしまうのである。それに特例債は「債」の名のごとく、つまりは借金でいずれは返さなくてはならないものである。

高橋正夫本別町長は、2004年11月13〜14日に行なわれた「小さくても輝く自治体フォーラムin北海道」に出席し、この中で高橋町長はこれまで本別町は町民と共に一緒に歩んできたことを紹介し、地域、中核都市、大都市、そして国が成り立っている、国の基礎は地方であるということを述べ、最後に「大臣や省庁の役人がもてあそぶような国にして相成らんということを大きき声でみなさんと決議できるような、小さくても輝ける自治体にしたい」と述べた。

地域の価値が現在、人口数と交付税だけで判断される今、安易な合併ではなく地域の実情を考えて、住民と行政が1つになって自分たちの地域と言うものを良きも悪きもよく考えたうえで合併が本当に必要であると判断すればそれはそれでいいだろう。

本別町長のいう国の基礎は地域であるということは、基礎をつぶせば国も倒れる事を意味するのである。

銀河線沿線でいうと銀河線という唯一自治体同士をつなぐものを取っ払い、いよいよばらばらになったところで一気にひとまとめに合併させてしまおうというのが水面下に存在するのである。

地域の名前が地区名などに格下げにはなるが、事実上消える事により文化遺産と言える地域名が消えそして地域が消えることを同時に意味するのである。

この合併問題は本来金銭ではなく、合併問題を通じて子供から高齢者まで、住民、行政とがみんなで一度立ち止まって自分たちの自治体、地域とはなにかということを考えるきっかけにならなければならないのである。

 

 



5 読売新聞 特集「耐震偽装」

http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe5500/news/20060111i101.htm (2006年1月11日)を参考にした

6 「ウィキペディアフリー百科事典」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC を参考にした

7 日本共産党 「しんぶん赤旗」

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-01-26/2006012614_02_2.html  2006年1月26日 要約

8 「全記録『小さくても輝く自治体フォーラムin北海道』」 小さくても輝く自治体フォーラムin北海道呼びかけ人事務局(酪農学園大学地方自治研究室)

発行 (2005年7月20日)p.14〜17を参考にした

9 同上 p.18

※補足・現在高橋道政のもとではコンパクトシティ構想を提言している。これは都市部に一極集中させ、人もものも集めて低コストで道政を行なって行こうという構想が描かれている。同じことを札幌市の上田市長も提言している。

 

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