特集 第28回:卒業論文 ふるさと銀河線とローカル線の果たす役割Z
2006年4月20日掲載
第4章 銀河線が銀河線である意味と銀河線を中心としたローカル線の持つ役割、可能性
第1節 地域と銀河線
地域に根付くローカル線
ふるさと銀河線は池北線から住民や沿線自治体の手で保存された鉄道である。そのため、池北線時代より地元に根付いてきたはずである。そして「銀河」をテーマに様々な物事が動いてきた。こうして住民の中に銀河線が浸透していったのである。
実際地元に入ると駅を出発する列車が鳴らす汽笛が聞こえると「あ、何時だ」などと言う具合に身近な存在であることが伺い知れる。また農村地帯では農作業の手を休め通過する列車に手を振る光景が多く見られた。このように銀河線は地域の人の心に根付いてきたのである。
しかしこれは銀河線だけではなくローカル線全体にいえることではないかと考える。本数が少ない分希少価値が高まりより親近感が湧くというように本数が少ないとより地元に根付く傾向にあるのではないだろうか。
銀河線の場合さらに会社のものではなく地元の鉄道であるがためにさらに地元に根付く力が強いのではないだろうかと考えられる。自分たちの手で守ってきた鉄路だから故のことなのだろう。
ただマイカーを使う若い人を中心に銀河線離れが進み行くのは銀河線がどんな存在なのか?ということを伝える自治体があまり何もしなかったからといえるのではないだろうか。
まちづくりと銀河線
ふるさと銀河線は旗揚げして以来各自治体でまちづくり、地域づくりのきっかけとなってきた。
例えば本別町では本別駅舎を建て替えガラスで出来た7つの三角屋根で「銀河」と沿線自治体を表し、また駅前通を銀河通りと名づけ道案内の道路標識も銀河を意識したデザインとなっている。
一方陸別町では銀河線と地元の名物である満天の星空、寒さなどを活かした天体観測会や、しばれフェスティバルなどを開催し銀河線とまちの両方をPRすることなどを行なっている。
他にも大小はあれど各自治体でオリジナルの銀河を活かしたまちづくりが行なわれてきている。沿線自治体は「銀河」という共通のテーマでひとつにつながっているのである。
しかしこの活動などに関しても地域間の温度差があり、陸別などでは「唯一の交通機関であるふるさと銀河線をいつまでも存続させるために、沿線市町の「銀河振興会議」1が主催するイベントへの参加協力、5人以上の団体を対象とした利用助成金の交付、銀河線イメージアップのための駅周辺環境整備、PR等、1人でも多く銀河線に乗ってもらうための活動を行なっている2。
この振興会議の内容は自治体によって様々であるが、銀河線が重要視されている自治体ほど活発で銀河線がまちに必要だというのが伝わってくる活動内容となっている。
また列車の4人掛けのボックスシート1つを家族で使うと割引になるという制度も陸別では行なってきた。しかしせっかく行なってきたこうした活動も地域間に温度差が生じると意味が半減してしまうのである。
この場合「銀河」をテーマに地域づくりをしようと言うことであれば一定のレベルを設けるとか、お互いに刺激しあって一緒に高めていこうとか、そういったことが必要であっただろう。
しかし現実を見ると陸別は陸別、本別は本別、池田は池田・・・・などのように調和しているようで調和していないというものとなっている。
これを回避するには「銀河」という共通テーマがあるのだから共通の方向性などを明確に決め、自治体単独でやるのではなく確かにそれぞれのまちの特色を出すのも大事であるが一定の共通レベル、方向性が必要なのである。
せっかく沿線自治体は「ふるさと銀河線」という名前にひしゃく型にくねって沿線自治体を結ぶ線路形状、北斗七星を連想させる7つの自治体、星が降ってくるような星空など、たくさんある銀河線に結びつける条件を活かしきれていないといえよう。
第2節 存続への道
廃止がささやかれる中銀河線へはたくさんの存続案が出されている。中でも筆者も思いついた存続方法としては
1 DMVの導入
2 高速化(特急列車の導入)
3 旅客以外の利用方法
4 住民の力、協力
5 バイオの導入
がある。
DMVの導入
まずDMVの導入であるが、DMVとはデュアル モード ビークル(Dual
Mode Vehicle )のことで、JR北海道が開発した新しい技術である。
これはマイクロバスを改造し線路でも走ることができるようにしたもので、JR北海道が赤字の続く地方交通線を変えるきっかけにと開発中のもので、現在1両単体のものと、線路上で2両連結し、2両編成で走ることができるU−DMV(Uはユニット Unit)とがある。2両が限界であるが、これはワンマン運行は2両までという法律上の制限があるためである。
もしこのDMVが導入されれば運行コストのかかる普通の鉄道車両を数人のために運行するのではなく低コストで済む。
また過疎が進む地方では同時に高齢化も深刻である。駅があっても歩いて行くのは特に冬場は困難である。しかしDMVは路上も走ることができる。つまり今まででは考えられない列車がバスになって線路の無い街中を走るということと同じである。つまり街中を走り回って乗客を乗せ、駅から線路に乗り、列車として線路上を走る。
何のメリットがあるか?と言えば、線路には信号はあれど、道路ほどではなく、閉塞区間内は道路と違って独り占めできる。
なので通常一般道での最高速度は60Km/hであるが、線路上を走ることで高速道路でもないのに70Km/hや80Km/h走行というのも可能である。
実際銀河線では85〜時には90Km/hほど出して走ることもあるそうだ。
これを例えば病院行きとして街中を走り乗客を集め、線路を走って一気に帯広や北見の病院へと言うことができる。つまり玄関先から病院までほとんど歩かなくてもいいというわけである。
さらに珍しさが人を呼びわざわざ遠方から乗りに来るという場合もあるだろう。
しかし軽い車両なため、信号、踏切りがちゃんと作動するかどうかや、雪に乗り上げ脱線したりなど、クリアすべき課題が多いが、営業運転が可能になったら地方交通線の切り札になることは確実で鉄道の今までの姿をガラリと変える要素をもっているだろう。
このDMVに関しても意見の相違が出ている。それは会社や行政は「すべての列車をDMVにしたら対応できるわけがない」などの意見がでる。しかしもう一方では、「全部の列車ではなく、臨機応変、利用用途に応じて、普通の列車だったり、DMVだったりと使い分ければよい」と言う意見だ。
当然全部の車両をDMVに改造するというと鉄道車両1両におよそ1億円かかるのに対し、DMVは1000〜2000万円の製作費用で済む。しかしこれを何十台も用意するとなれば話は別である。
全部をDMVで走らせるのには通学時間などで無理が生じるだろうし、それ以外でも支障をきたす場合もあるだろう。DMV導入は柔軟な考えが必要なのである。
DMVは2006年中にもJRで営業運行をするという計画が出ている3。このほかにも全国や、世界各地から注目されている技術であり、導入に向けて動き出している地域もある。そうしたところを見るに銀河線でも特区にしようと提案した動きがある中で、結局何にもならなかったというのは残念でならない。(これをDMV特区構想という)

開発中のDMV 写真は初代のもの JR北海道 苗穂工場にて
高速化
銀河線は140.0Kmと長い距離を走る。そのため銀河線を走る「快速銀河」でも2時間以上を要する。なので移動に時間がかかってしまう。ただ北見―池田の全区間を住民が乗るか?といえば絶対ではないだろうがNOに限りなく近いであろう。そこで高速化をしては?ということである。
高速化には現状の列車の速度アップと特急列車の導入という方法がある。 しかし特急列車導入には問題がある。
まず特急料金を取るからには粗末なCR70で対応するわけにも行かない。そうなるとJRに特急を乗り入れてもらうか自社で相当の車両をいれなくてはならない。入れる方法としてはJRから中古車を買うという方法もある。
また札幌―稚内で運行している「スーパー宗谷」の車両は一部はJR所有であるが、大半の車両が「北海道高速鉄道開発(株)」所有でJRに貸付している。
これを考えれば銀河線で車両を買ってJR線に乗り入れレンタル料をもらうという方法もある。
さらに「幹線鉄道等活性化整備事業」という制度を利用するという方法がある。例としては「三重県の第三セクター鉄道「三岐鉄道・北勢線」という全長20.4キロのローカル線に対して新規適用され、一旦廃止が決っていたものが一転し存続した」例がある4。
ということはコスト面はこれでクリアは可能である。しかし銀河線には様々な問題があるのが実状である。
「ふるさと銀河線に特急列車を走らせようの会」が打ち出した方法には様々なコスト面などの問題クリアの方法が思案されている。
しかし実際色々な制度が適応されたとしても、特急のために大規模な路盤の改修などが必要になる。
特急と言うことであれば現在のCR車両よりも重量があるのは言うまでもないだろう。さらにその車両が95Km/hで走行するとしても路盤にはダメージを与える。
また車両が多種に渡ると整備面も異なってくることからコストがかかってしまう。
さらに銀河線特有の問題がある。実際本別町で聞き取りをした際特急列車の導入に関して聞いて見たところ色のいい返事がなかったのである。
理由としては「特急だと飛ばされる自治体が多くなる」ということである。
都会では簡単に飛ばすことが出来る駅も、銀河線であれば駅1つ1つが1つの地域や自治体の出入り口だったりする。その駅を利用客の状況で通過されてしまうと自治体事態飛ばされてしまう。そうなるとまたここで線路でつながっていながら特急の止まる駅と止まらない駅とで温度差が出来てしまうと考えられる。
快速でも色々と異論があったが、さらに特急ともなると地域面で見ると深刻な問題となるのである。
またJRの特急を通すという方法が無いわけでもない。しかしこれだとJRからすれば銀河線は単なる通過点であり停車駅がわずかだったり、止まればいいが全駅通過というただの通過地点化してしまうことも考えられる。確かに線路使用料が見込めるが、路盤改修費用、特急に合わせた駅構内の有効長の拡張などかかる費用を考えれば、使用料はごみのようなものであろう。
ただ石北本線の老朽化が深刻でトンネルは崩落の危険が高くもし崩落してしまえば、もうそれっきりだという。そうなれば嫌でも銀河線を使わねばならない事態になるかもしれない。銀河線の他オホーツク圏を結ぶ線として次は釧路―網走の釧網本線までないのだから。
旅客以外の利用
現在銀河線には旅客列車しか走っていない。ということは最終列車のあと次の日の始発列車まで線路は遊んでいることになる。JRでは特に夜間ともなると貨物列車のゴールデンタイムとなる。
一般の列車が減る夜、逆に各方面へ向け貨物が続々と出発して行く。そこで銀河線の線路を遊ばせておくのではなく貨物を導入してはどうかという案である。
しかしこれにはまたいくつかの問題がある。
・ 重量の問題
・ 駅構内の有効長問題
・ 運ぶ荷物の問題
・ 貨物駅問題
である。
重量の問題
まず重量問題であるが、貨物は旅客列車より重たいのは当然である。さらにそこに貨車を牽引する機関車が加わるとなると路盤は即痛んでしまう。というより今の路盤を大々的に改修しなければ貨物は入線できない。
次に駅構内の有効長問題であるが1日1往復としても必ずどこかで反対方向からの列車とすれ違わなければならない。しかし1両2両単位で走る銀河線の駅構内の有効長は短く長い貨物列車は構内からはみ出てしまう。これでは列車同士すれ違うことができない。
では構内を延長してはどうか?ということになるが、そうなると駅自体の拡張の他信号設備までも改良しなくてはならず貨物運行に旅客以上の労力、コストを要してしまう。これでは貨物は逆に荷物を運ぶ「お荷物」になってしまう。
運ぶ荷物の問題
これは産業がさほどない銀河線沿線で果たして貨物が運ぶ荷物がそもそもあるのか?という問題である。荷物が無ければハコだけが走ることになる。ただ農産地であるため農産物の輸送が見込まれる。
貨物駅の問題
貨物列車にも専用の駅が存在する。ということは荷物の積み降ろしをするには駅が必要である。
北見にはJR貨物の駅があるので使用料金を払うなりして使うとして、他の貨物駅の無い駅の問題がある。
しかしこれらの問題を解決する方法ものとして、運ぶものが少ないということは短い編成で済む、なので構内を少し改良するだけで済む、ないしは規定内で納めれば改良の必要が無い。となると重量問題もなんとかクリアできる簡易的な貨物とすれば、フォークリフトが行きかう貨物駅にしなくとも、駅を使って荷物の積み降ろしが出来ればわざわざ駅を設けなくとも今ある駅を有効活用できるのである。
そういったことで貨物列車はまるっきり無理ではないといえる。
さらにこれらをJR貨物に任せて通せば線路使用料を徴収できるのである。山間の石北本線を必死に登らずとも高速化工事の済んでいる石勝線、根室本線で一気に池田まで来れば、あとは銀河線でオホーツク圏へ抜けるだけである。そう考えれば銀河線は石北本線に変わる有力な線となるわけである。
コスト面は色々制度を使う方法もあるがJRと連携して行なう方法もあろう。お互い線路でつながり道内の住民の足を担う会社として、会社同士の垣根を越えて連携しあう必要があるのである。そうすれば旅客面でも色々と相互性が生まれ、便利になる可能性すらあるのである。
住民の力、協力
ふるさと銀河線を取り巻く環境の中心は社員でもなければ自治体でもない。それは住民である。
第三セクターの定義で地域振興のためなどと述べたが、これは第三セクターの会社が地域振興をするのではなく、住民の地域振興への協力、手助けをすると考えるとよいもので主体は住民なのである。
しかしこんな話がある。2004年にふるさと銀河線存続を呼びかける寄付を募った。その結果20万5557円が集まった。その内訳は札幌市内が10件、岩見沢、江別、函館、紋別などからもあり東京からの1件もあった。中には5万3千円を出した人もいるという。他に音更、大樹からも1件ずつあった。しかし肝心の沿線7市町からは0であった5。
これでは一体誰の鉄道なのか分からない。おそらくあまりにも身近すぎて、あるのが当たり前になっているのと、利用しない派が多くなってしまったためなのではないかと思われるが、それにしても何千人もいる沿線住民から1円も、反応すらなかったというのはあまりといえばあまりではないだろうか。
この「誰かが・・・」や、「自分達がしなくても・・・」体質が悲劇を呼んだ原因にもあたることだろう。
だから先に提示した銀河線を運休にしてみなければ住民はことの重大さに気づかないのだろうと考えたのである。
確かに存続運動をすれば人は集まる。存続運動団体もある。しかしここにも温度差があり、積極的にやっている人全然やってない人と温度差があるのである。
銀河線は地域間の温度差とさらに住民間の温度差とがあり、両方を克服しなくては「沿線自治体共同体」として1つの塊になることは困難であろう。
まず意見を沿線で聞いたところですでに女性や高齢者を中心に比較的興味のある、関心のある意見が聞かれたが、一方で若い人や男性を中心に冷めた意見があったのも問題ではないだろうか。
筆者はこの他自身のホームページでもアンケートをとってみた。その際コメントも任意ではあるが募ったところ次項のような意見があった。それを本別町で行なった聞き取り調査の際のコメントと同時に示すとする。
賛否両論あるにせよ、沿線を初め様々な意見があるが方向性としてはあればいいとか、存続を望む方向、矛盾点を指摘するものもあり多様ではある。
しかしこうした意見を見ても今まで筆者が述べてきた事柄がにじみ出る内容となっているのである。
ただ悲痛な叫びというのは聞かれなかった。悲痛な叫びをあげているのはむしろ活動を続けてきて無情にも最悪の方向へ行ってしまった陸別町や「ふるさと銀河線ふるさと銀河線存続運動連絡会議(現 心に刻もう!ふるさと銀河線の会)」をはじめとした、銀河線の重要さに気づいていた人たちではないだろうか。それは銀河線がなくなるとうこと以上に住民が事の他、無関心だったということの方が大きいかもしれない。
・
・ バスになると高くなるし、時間がかかりすぎる
・ 病気などで運転できないときに困るため
・ 第三セクターではなく民間で行えばよい
・ 今こそ政治が力を発揮する時ではないか、代議士や知事は何を見ているのか
・ 安全・環境への貢献度はもちろんのこと、税金で無条件で赤字を補填させている道路整備より経済的
・ 住民の足が採算性だけで判断されるのはおかしいから
・ 銀河線が切り捨てられる一方で、いるかどうかも分からない新幹線建設、高速建設に莫大な費用をつぎ込むのは納得できない
・ 北見市の力が大きすぎる
・ コストが大きすぎるなら仕方が無い
・ 誰も乗らないものはいらない
こんなことでは住民の力、協力が得られるわけが無いのである。
陸別町を例に取ると金澤町長を中心に行政「心に刻もう!ふるさと銀河線の会」の代表などだけが空回りしている感が否めない。
実際2004年1月18日に陸別駅前で行なわれた住民総決起集会では500人が集まり、プラカードなどを掲げたり意見を述べた。
しかしこの場に参加したふるさと銀河線社員の1人も自身のレポート「『緊急レポート 鉄路の行方V』内で「雲ひとつ無い晴天とはうらはらに何か釈然としないものを感じていた。決起集会にしては参加者の存続への爆発的熱気が感じられなかった」と述べている。
このように主催者側(この場合はふるさと銀河線振興会議)が場を設けエンジンがかかっている中、住民には農村地帯特有ののんびりした住民意識があるとしても熱意が感じられるものではなかった、主催者側が空回り状態だったのである。
しかし何をするにも北見の力が大きい、政治の力云々といっても、住民の結束力が実は金よりも権力よりも力を持っているのである。
住民が揃って声をあげれば何らかのことが起こった可能性も十分あるのである。
実際「心に刻もう!ふるさと銀河線の会」の代表が行政側ともめたりしてるうち、本来2005年廃止だった銀河線が半年廃止延びた経緯がある。代表らだけでもできるのだから住民が一致団結したら存続し続けることだって可能だったかもしれないのだ。
せっかく沿線は農村地帯なのだから地域同士のつながり、住民同士のつながりは都会のとなりに誰が住んでいるのか分からない状態よりはあるはずである。
その条件をうまく活かせば大きな力になった可能性も否定はできないだろう。
またこうした人と人とのつながりが地域づくり、まちづくりにも大きな力を及ぼすのである。行政がいくら案を出そうと実行しようと住民が協力しなければはじまらないのだから。
そうした中ですっかり廃止モードとなってしまっているふるさと銀河線であるが、廃止容認を最後まで渋り、苦渋の決断をした陸別町が今、動き出そうとしている。
4月に廃止された後、廃線になった鉄路を活かして列車を走らせようという構想である。陸別がこのようなことを選んだ、打診したのは、いかに銀河線を存続させたかったかが見てとれるだろう。
これは陸別と秘境駅として知られる川上の9.8Kmの線路を残し、列車を走らせようというもので陸別町の他、町の商工会有志が設立する有限会社「銀河の森」が運営するというものである。
法的、財政的に課題が多いが鉄路が撤去されてしまわないうちにと本年度中の開業をめざしている。
運行する車両は、銀河線の車両を動態保存し走らせる、SLやトロッコを走らせる構想で、どの車両を導入するかは検討中である。移動手段ではなく観光的要素の強いものである。※
運行期間は4〜10月の土、休日と夏休み期間中と考え、現在の陸別―川上間の所要時間は11分であるが、ゆっくりと景色を眺められるように30分ほどかけるという。
実現には実際に銀河線にSLを走らせる構想を最初に出したボランティアグループ「大畑線キハ85動態保存会」の協力も得るという。
「大畑線キハ85動態保存会」は、実際に青森県の旧下北交通大畑線大畑駅構内で気動車を運行させた経緯がある。
観光目的もあるが、ここに鉄路があったという歴史を保存したいという要素もあるようだ6。
これだけ具体的に出されたのはこれが最初だったはずである。実は岡山電鉄からのラブコールもあった。しかし廃止が迫ったという中で、未だに具体的な話が出ていない。
実際に銀河線社員は「現状、特に冬の銀河線を見たら引くはず」と言う。
確かに山間部を初め、オホーツク海側と−40度にもなったことのある陸別など、気象条件が非常に厳しい銀河線、さらに老朽化が進む橋梁の更新工事や、車両面など問題が山積みすぎる。そうした中で鉄道を運行させるのは困難を極め、さらに乗客もいないともなれば投資するだけ無駄と判断するだろう。それは岡山電鉄が民間ゆえに。
そこで陸別の動きを見ると、地元有志によるもの、地域に密着した動きである。なので地元を知り、銀河線を知っている住民だからこそできることなのだろう。
もしこの動きが陸別だけでなく、沿線7市町に及べば今度こそ住民の有志の手で、それも全線で存続が出来たはずであるし関心があれば陸別に参加要請をするのではないだろうか。それに踏み切れない自治体が回りにある中陸別はなんとか銀河線を残そうとする動きは、最も銀河線を必要とする自治体のささやかなで大きな声なのだろう。
しかし展開するのがもう少し早ければもっとこの輪が広がっていたのかもしれない。
せっかく残す動きのある銀河線、しかしたった9.8Kmしか残らないとなると、すでに銀河線としての、鉄道としての意味がないといえる。
銀河線は北見、池田でJRの本線に接続しているからこそ、全部自治体がつながっているからこそ意味があるものなのだから。
仮にこの構想が成功し、走り出したとしても池田、北見からの交通の便が悪ければ、結局はマイカー利用者限定となってしまう。そうなれば訪れる人も限られ、結局最後は再び廃止になってしまう恐れがある。このようにせっかくの行動も、訪れる人の足がなければ意味が無いのである。こうした問題も出てくることだろう。
バイオ
2004年2月銀河線社員の元を「NPO次世代資源エネルギー開発機構」の代表が訪れた。
現在地球温暖化ガスの1つであるCO2の削減が叫ばれる中、石油資源から抽出される燃料を他の燃料に転換することで、CO2を抑えようとの研究、情報収集を行なっているとのことであった。
野村氏が提示したのは化石燃料をバイオエネルギーに転換する、そして銀河線140Kmの沿線を油田(この場合はヒマワリを栽培)にして花の季節は観光で、種に季節は燃料抽出に使うというものであった。
ディーゼル燃料を使う銀河線にはよい提案である。そしてそれを自社で使う以外に他社へ売るというものである。確かにそうするとバイオの銀河線とイメージされるわけである。そしてバイオの見学とヒマワリ見学とで集客が可能だという7。
確かに滋賀県東近江市愛東地区で1995年始まった廃食油から燃料を取り出して作るディーゼル燃料の「BDF」(バイオディーゼルヒューエル)というものがあり、98年からは菜の花を栽培して油をとって、家庭で使った後、回収し、BDFにするという「あいとうイエロー菜の花エコプロジェクト」がスタートしている8。
植物は違えど畑を油田に変えるということで言えば、野村氏の提案と同じである。
この活動には廃食油の徹底した回収システムが住民間に必要であり、これがないと成り立たないシステムである。
この廃食油を住民の絆、つながりを強め、さらに自分たちの出して集めた廃食油が銀河線の原動力となっているとあらば銀河線への関心も高まるはずである。
第3節 銀河線が消えたら
2006年4月、ふるさと銀河線は池北線時代から続く鉄路に幕を引く予定である。では、銀河線が消えたらどのようなことになるか検証してみるとする。
地図から消える
沿線自治体は各自治体、自治体の地区に駅がある。しかし銀河線が廃止になり、地図から消え去ってしまったら駅が消え、駅名が地図から消える。これは同時に自治体、地域の名前が消えるのと同じである。
地図から消えるとまちや地域の存在自体が消えるに等しいのだ。そして忘れ去れてしまうのである。
そうなれば地域事態も危ぶまれるのである。地域的に見るとただ地図から消えるでも大きな問題となるのである。
駅は地域の顔である。その顔が消えるということは顔が消えることを意味するのである。それは多くのまちが駅を中心に開かれたからであろう。
地域、まちが消える
鉄道が廃止になるとバス転換とはいえ、やはり鉄道よりも頼りない、信頼度が大きく下がるのは確実である。
そうなれば交通弱者を中心に通勤、通学、通院が非常に困難になり次第に暮らせなくなる。そうなれば下宿したり、転居して地域からどんどん人が離れてしまい過疎に拍車がかかる。
現在日本各地で集落が消えつつある。それは地域で高齢化が進み高齢者だけで生活できなくなるため、苦渋の選択で親しんできた地域を離れて行った結果である。
もし銀河線がなくなれば訪れる人もいなくなり、住む人もいなくなるとなれば集落の廃止問題もまんざら人ごとではなくなるはずなのである。
地域が消えるまでいかなくとも寂れることは確実である。かつて天北線の分岐点だった宗谷本線音威子府村では鉄道関連の職員が多くいた。しかし鉄道の廃止とともに鉄道員がいなくなり、まち事態もそれに連れ寂れていったという。
このように鉄路の与える影響は小さいようで決定的なダメージを地域に与えるのである。
まちの価値が下がる
「心に刻もう!ふるさと銀河線の会」の代表は調査の際「鉄道がなくなるとまち自体のイメージ、価値が下がる」と語った。
札幌市内でも地下鉄の沿線や近くは土地が高く、地下鉄がない場所は土地が安い。こうしたこと考えれば単に交通が便利不便だからというだけでなく、地下鉄の「ある無し」で地域の価値が形や数値で表すことができないイメージ的なもので決まってくると考える。
さらにオホーツク海側の紋別市は比較的大きなまちであるにも関わらず鉄路が廃止になってしった。 同じオホーツク海側の網走は鉄路が存在する。
ほぼ同じ条件で両者を計りにかけると、やはり鉄道のある地域の方が利便性抜きで考えても好印象を受ける。それはたとえ本数が少なくてもである。
それは「鉄道もないの?」などの言葉に象徴されるように鉄道の有る無しが人々の地域へのイメージを大きく左右するからではないかと考える。
以上で述べたように地図から消える、消えないという問題も絡み、地域のブランド、価値観が鉄路1つで決まってしまうともいえるだろう。
もう1つ銀河線にはさほど関心のない池田であるが、銀河線がなくなると思わぬ事態になりかねない。それは特急列車の通過である。現在は全ての特急列車が池田に停車している。しかし中には銀河線の接続を計っている列車もある。もし停車理由であった銀河線への接続が行なわれなくなれば停車の意味がなくなり、特急列車は池田を通過するだろう。そうすれば池田は寂れることとなるはずである。
実際特急がついてどれだけ乗降があるか?といえば、ゾロゾロと駅から出てくる状態にないのが実情である。そんな駅なだけに唯一の停車理由でもあった銀河線への接続の役割がなくなれば通過列車が出ることであろう。そうした思わぬ弊害に気づいていないのが沿線自治体なのである。
バス転換
銀河線が廃止後バス転換されることが決まっている。しかし「心に刻もう!ふるさと銀河線の会」の代表は「真冬の陸別の道路はツルツルで走れるものじゃない」と語る。
極寒の地陸別は真冬道路条件が相当悪い。そこに代替バスが走るとなれば遅れること間違いなしで、一体いつ来ていつ着くのか?という状況になる。
それも寒い中高齢者などにバスをあてもなく待てということになる。バスの進行状況を知らせるシステムを確立すればいいという意見もあるが、そんな設備を作る金があれば鉄路を存続させたらどうかと考える。
「心に刻もう!ふるさと銀河線の会」の代表に、ある高齢者が「バスになったら家の前から乗れるから便利になる」と言ったそうだ。これに対して代表が「そんな1人1人好き勝手に乗り降りしてたらいつまでたっても着かないよ」と言ったそうだ。
このように高齢者にはバス転換の実情すら知れ渡っていないのである。確かに駅よりはバス停を増やすというが最高速度が60Km/hの一般道であり、さらにバスがそんなに出すわけも無く銀河線より時間がかかるのは確実である。さらに料金が高くなるのである。
これで益々マイカー利用が増えればバスは鉄路より簡単に減便、廃止がなされるので、バスが減らされたり、区間運行になったりと益々地域同士のつながりが失われるのである。
田舎の役割
地域、とりわけ田舎が不便になったら都会へ出ればいいという意見がある。しかし、「心に刻もう!ふるさと銀河線の会」の代表は「都会の食料は誰がどこで作ってると思う?」と語る。
農村地帯で生産された農産物は都会へ送られ消費される。しかしどんどん地方を縮小させれば農民がいなくなり食糧生産が出来なくなる。
ましてやアメリカの牛肉問題をはじめ「食の安全」が問われる現在、国産が求められる時代に作る農家が撤退せざるを得ない状況に置かれては、食の安全などあったものではないのだ。
さらに銀河線沿線では不便な鉄道の変わりに、都会かと思うほど車が走っている。環境問題が叫ばれる中こうした光景はあるまじき光景である。さらに食料口に入るものを作っている場所だというのに、これほど車が走りCO2はじめ、有害物質を撒き散らしていてよいのだろうか。
食の安全を追及するのならばまず生産地の現状をつかみ、何が必要なのかを明確にする必要があるだろう。都会の「食の安全」を守る、それが田舎、地方の役割である。
しかしそういったところに考えが及ばないということは、都会と農村との切り離しが進んでいる事を窺わせる。
1 沿線7市町から構成されるもので、「ふるさと銀河線の安定的運行と利便性の確保、向上をはかり、沿線地域の発展に寄与する」13目的で作られた。
2 『ふるさと銀河線10年のあゆみ』「(平成11年6月4日)p.85を参考にした
3 「Yahoo Japanニュース」 (2006年2月1日 掲載)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060201-00000023-maip-soci
4 上田義則 著 『追跡レポート 鉄路の行方U』(平成16年4月5日 p.10引用
5 上田義則 著 『追跡レポート 鉄路の行方V』(平成16年7月1日)p.6を参考にした
6 北海道新聞「銀河線の列車保存、陸別町が検討 廃線後9・8キロ、観光用に」(2005年12月21日)要約
7 上田義則 著 『追跡レポート 鉄路の行方W』(平成17年4月23日)
p.24要約
8 地方自治研究室 青木洋果 著 「『卒業論文要旨』菜の花がもたらす社会循環型社会」〜滋賀県東近江市菜の花プロジェクトを通じて〜」を参考にした
13 ふるさと銀河線10年のあゆみ「ふるさと銀河線振興会議」(平成11年6月4日)
p.80
※補足:陸別町での動きは本論作成時より現実味をおび、現在廃止後に捻出される銀河線の999ペイント車含む車両6両を使って鉄道ではなく、公園として整備し観光施設、歴史を伝える施設とすることを目指している。実際に来場者が運転できるという構想まであるようだ。
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